明石市立木の根学園ひまわり工房管理者
宮﨑 泰生
春はもうすぐ・・・早いもので今年度も残すところあと一ヶ月となりました。
このブログリレーも終盤に差し掛かり、あとはアンカーの方にしっかりバトンを渡したいと思います。
平成15年に明桜会に入職させていただき、気が付いたら16年目を迎えます。
この間、利用者様と共に笑い、共に悲しみこれまで色んなことを経験させていただきました。
忘れられない出来事・・・
10年以上前、大地の家に勤務していた頃
ある入所利用者のAさんのお父さんが自宅で倒れそのまま亡くなられました。
Aさんは毎週末バスに乗って、父親が一人で待つ自宅に帰省されていましたが、ある日いつも施設に戻って来られる月曜日の朝になっても帰って来られませんでした。
電話も繫がらず、夕方になっても施設に戻って来られないため、夜になってその時の施設長が自宅を訪れると、お父さんは居間のこたつに入った状態で横になり既に意識がなかったそうです。
そのとなりでポツンと座っていたAさんが一言・・・
「おとうちゃんずっと寝たままで起きてこんねん・・・」
その後、お葬式も終え、しばらくして主がいなくなった家は処分されることとなり、最後に荷物や遺品を引き取りにAさんと二人で自宅に訪れました。
お父さんが大事にしていた電卓や腕時計など・・・それと押し入れの中に「オセロゲーム」がありました。
本人は「やったことない!」とのことでしたが、せっかくだからと遺品と共に施設に持って帰ることにしました。
そして親戚の方に見送られ、家を出て大地の家に戻る途中の信号待ちの車中でした。
それまで表情を崩さず淡々としていたAさんが
「もう僕の帰る家なくなってん・・・これからずっと面倒見てな!」
と涙を流しながらハンドルを持つ僕の手を掴んできました。
車を路肩に止め、2人でワンワン泣きながらその時にある約束をしました。
「Aさんには大地の家があるから大丈夫!これからも冗談を言い合って毎日笑って暮そう!」
その日から、Aさんとはいつも冗談を言ったりふざけ合ったりしていました。
宮﨑の顔を見かけると「あぁ~~またしょうもないこと言いに来よるな~」とAさんも嫌な顔もせず付き合ってくれました。
そしてその頃から色んな職員とオセロゲームをすることが日課となり、来る日も来る日もお昼ご飯を食べている職員を捕まえては「オセロやろ!」
最初はルールも分からなかったのに数年度にはハンデをもらっても勝てない職員がいるほどの腕前になりました。
もうAさんも年を重ね、以前のようにオセロをすることもなくなったようですが、今も大地の家で元気に暮らされています。
入職して間がない頃のこの出来事は自分のこの仕事に対する思いの原点であり、支えでもあります。
感情を表現したり言葉に表すことが難しい方にも、必ず思いがあること。
そして、一人ひとりの人生にはその方にしかわからない重みがあること。
楽しいことだけじゃなく、辛く悲しいことも豊かな人生には必要であること。
若い頃は、利用者様の安心・安全をいかに守るかということが一番大事だと思って支援にあたってきましたが、
その前に「一度きりの人生を豊かに生きるために、そのために支援者としてできることって何なのか?」
今はそのために法人として、木の根学園として、一職員として求められていること・必要とされていることに力不足を感じながらも日々取り組んでいます。
どんな仕事もそうですが、うまくいかない時や壁にぶつかる時はあると思います。
木の根学園でも利用者様も職員も一人ひとりが色んなことにチャレンジしてくれています。
成功したら一緒に喜び、失敗しても「次頑張ろうよ!」と励まし合って乗り越えられるそんな事業所でありたいと思っています。
働く職員の皆さんがそれぞれのフィールドで「必要とされていること」「頼りになっていること」を実感し、
「豊かな暮らし」に向けて利用者様と共に歩んでいけるような法人であるために、
これからも微力ながら努めていきたいと思います。